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最果て風呂

Heroku との思い出

Heroku という単語が私の日記に登場するのは 2012 年 2 月 23 日のこと。旧字旧仮名変換プログラムを Web でも使えるように、と Ruby + Sinatra で Web アプリを作成し、これを運用するレンタルサーバ的なものを探している際に発見したのでした。

26 日にアカウントを取得。Heroku CLIgem install して、チュートリアルを見ながら作業をしました。つまづくこともなく、驚くほどすんなりとデブロイすることができた、との感想が書いてある。裏で何をしているのか知らない初心者でも簡単に Web アプリを運用することができる。これはすごいことですね!

3 月 22 日に「nokaco.heroku.com に仮名使いの変換ページを作ったよ」とツイートしていました。当時のドメインは herokuapp ではなく heroku だったんですよね。ちなみに nokaco というのは New Old KAna/KAnji COnverter を略したものです。

5 月 22 日にプロジェクト名を mto と変更し、Heroku での運用も mto.heroku.com としました。この頃は https が強制されておらず、http でもアクセスできたんですよ。

2014 年 6 月 15 日、stack を bamboo から cedar に移行するため、一旦アプリを削除し、すぐに mto で作成し直す作業をしました。ドメイン名が heroku から herokuapp に変更されるのが原因だったのかもしれません...。この時の Ruby のバージョンは 2.0 となっていました。Heroku 初体験をした 2012 年の時は bamboo-mri-1.9.2 と書いてあったのですよ。

辞書の要素数が大台に乗る度に Twtter で報告をしたのですけれど、アクセスの増加はありませんでしたね...。2012 年 10 月に 2000 だったものが、現在は 5800 となっているので、4 回くらしかつぶやいてないことになりますか。

2013 年に Heroku CLI が Gem から npm に変わったようです。Ruby から JavaScript になったのは pow が流行ってたからかな?ちょっと時期的なものの記憶があやふやです。

話はそれますが、basecamp は pow や xip.io という便利なものを提供してくれましたけれど、継続してはくれませんでしたね。puma や nip.io もいつまで使えることやら。

その後もスタックを heroku-xx に変更したり、Gemfile の Ruby バージョンを上げたりと、その時々に合わせて対応していきました。いちばん手間がかかったのが、WEBrick の同梱がなくなったために puma を使うように変更したことくらいですかね(直近であり、また最後の作業となりました)。

思いついたときに Pyhton や Go の Web アプリを実験したりと、手軽に試せる環境として便利に使わせてもらいました。ほんの数回でしたけれどね。

コロナ禍になった頃だったと思います。声優さんによる朗読音声の公開というのが流行しました。その題材としてフリーなやつない?的な話の流れがあって、旧字旧仮名のやつしかないのどうするの?ってことで、青空文庫さんにちょろっと言及してもらったらしいです(かなり後になって気づきました)。

これ以降、月末の 26 日前後で無料 dyno 分を使い切ってしまい、Web アプリが停止してしまうことが続いていました。ちょっとお試しだったのにガッツリ使ってしまっていたのですよ、無料なのに。そしてそれがもう、自分にとって普通のこととなっていました。

2022 年 8 月 26 日。Heroku の無料枠が廃止されることを知りました。

失うことがわかってから知るありがたみってやつですね。10 年間無料で利用させていただきました。もう感謝しかありません。ありがとうございます。

さて、サイトの運用を続けることができなくなる(閉鎖する)となると、これを利用している方への影響が気になるようになりました。いつも見ているサイトが見れなくなった時の残念な気持ち。これを回避したい。

Heroku では Ruby + Sinatra の構成で運用していますが、データベースを使っているわけでもありませんし、JavaScript による実装も存在しているので、サイトを移転するのは容易です。そこで GitHub Pages を利用することにしました。

GitHub には mto の肝である辞書を公開するためのリポジトリがもともと置いてあって、説明のためのサンプルページが存在しているのです。これを再利用しない手はありません。

閉鎖までは 3 カ月間ありますので、textarea の placeholder に閉鎖と移転先に関する文章を入れて、各自によるページ移動やブックマークの変更をしてもらうことを意図しました。また、相当の期間を過ぎてから meta refresh 0 秒による強制リダイレクトをする予定です。

htaccess が使えないため、Google 検索のインデックスから外れてしまい、新規の方にはその存在を知ることができなくなります。常連さんとひっそりやっていく感じでしょうか。

実は告知をするのも迷いました。形態素解析を用いた優秀な変換サイトもありますし、この機会に消えた方がいいのではないかと。でも...。

文頭にも書いてありますが、Web アプリを作成したのは EmacsVimCUI を使わない人達にも手軽に旧字旧仮名に触れてもらえるようにと考えてのことでした。とにかく存在し続けて、旧字旧仮名に触れる機会をゆるく提供したいのです。

世の中にはいろいろなタイプの人がいて、わざと炎上して強制的に旧字旧仮名の文章を読ませようと企む者もいます。とにかく目に触れさせれば勝ちだと。確かに今では消えゆく旧字旧仮名の存在を知らしめることはできますが、悪意を含んだ企みによる行動というものは定着せず、かえって憎悪を生むことになってしまいます。

時代の流れでいろいろと変わってきたけれど、とりあえず今のところは残っている。正しさとかを説くよりも、昔はこう書いていたんだよね今は違うけどさ、で良くありませんか?

話が脱線してしまいましたが、Heroku との思い出は mto との思い出と重なる部分がほとんどです。良い経験をさせていただきました。限界まで使ってしまう私のような無料ユーザー達が多くいたことが、今回の発表となってしまったのは想像に難くありません。もうしわけありません。

Heroku ありがとう。そしてさようなら Heroku。